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訴訟には法定離婚原因が必要

法廷離婚原因とは?

協議離婚をする場合には、夫婦で離婚を合意すればよく、離婚原因に制限はありません。
しかし、他方が離婚に反対して離婚の合意が成立せず裁判離婚をする場合には、法律の定める離婚原因にあたることが必要です。
法定離婚事由には次の5つがあげられます。

1) 不貞行為
2) 悪意の遺棄
3) 3年以上の生死不明
4) 回復の見込みのない強度の精神病
5) 婚姻を継続しがたい重大な事由

「回復の見込みがない強度な精神病」について

・回復の見込みのない強度の精神病とは不治の精神病のことです。
・最高裁判所は「今後の療養や生活について具体的な方策を講じ、ある程度の見込みがついた上でなければ」強度の精神病を理由とする離婚は認められないとしています。

精神病の場合は、本人自身の問題ではありませんから、「不貞」や「悪意の遺棄」のような責任の有無の問題とは全く異なります。
精神病かどうかの診断は医師が判断するものですし、本当に回復の見込みがないかどうかも、そう簡単に判断できるものではありません。

ですから、配偶者が精神病で入院したからといって、すぐに離婚請求をしても、認められることはまずないといっていいでしょう。
また仮に「強度で回復の見込みがない」と判断されても、離婚後の療養や生活などについて、ある程度相手の生活のめどがついた場合でないと、裁判所はなかなか離婚を認めません。

しかし「回復の見込みがない強度な精神病」に該当しなくても、精神病(あるいは痴呆症)のため「婚姻を継続しがたい重大な事由」が生じていれば、その事由によって離婚を認める判断がなされます。

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「悪意の遺棄」について

・悪意の遺棄とは、夫婦がその同居義務、協力義務、扶助義務を尽くさないことが非難に値する場合をいいます。
・愛人のもとに入りびたって帰ってこない、実家に帰ったままなど故意に夫婦の義務を怠っている場合です。

夫婦が一緒に住み(同居義務)、経済的にも精神的にも協力し助け合って生活する(扶助義務)ことは、法律で定められている夫婦間の義務です。
「悪意の遺棄」とは、これらの義務に違反することをいいます。

ですから、「家にお金は入れているけれども、夫は理由もなく家を出てほとんど家に帰らないので、夫婦でいる意味もない」という場合や、「同居はしているけ れど、生活費をいっさい家に入れない」場合もこの「悪意の遺棄」として認められます。
一方、「夫の暴力から逃げるために家を出た」とか「夫の不貞に嫌気がさし、顔を見るのも嫌だから離婚を考えるために別 居した」といった場合は、同居義務違反にはあたりません 。

また、単身赴任のように理由があって別居している場合も、同居義務に違反したことにはなりません。

夫が生活費を稼いでいるのに対し、専業主婦(あるいはパートのような仕事だけしている)である妻が家事をやらないという場合は、時間的に余裕のある者が家 事をするという前提で考えれば、家事の放棄として扶助義務に違反しているといえるかもしれません。
しかし、夫婦が対等に仕事をもっているために家事がおろそかになるような場合は違反になりません。

妻だから家事をすべきとはいえませんし、家事に協力しない夫の方が扶助義務に違反していることになります。
このようなケースでは、「悪意の遺棄」だけでなく、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるかどうかという面 も問題になりますから、結論はケース・バイ・ケースになることが多いものです。

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「3年以上の生死不明」について

・生死不明とは、生存も死亡も確認できないことです。
・最後の音信より3年経過した時点から離婚の原因として認められます。
・生死不明の場合は別に失踪宣告の制度があります。これは7年間生死不明の人を家庭裁判所の宣告によって法律上死亡したものとする制度です。

家を出たまま音信不通となり、生死もわからないままの状態が3年間続いた場合が、これにあたります。

この場合、配偶者に対して、生死不明の状態に至った責任の有無は問われません。
明らかに配偶者が家庭を捨てて出て行って生死不明になった場合には、出て行った者の行為は「悪意の遺棄」にあたります。
したがって3年間待つ必要なく離婚できます。
また、「音沙汰はないけれど、どうやら生きてはいるらしい」場合にもこれに該当しませんから、別の離婚事由を探る必要があるといえるでしょう。
いずれにしろ、いなくなった時の状況からして、生死の判断や戻る可能性についてはあ
る程度の予想がつくのが一般的なので、3年間待つよりも、「婚姻を継続できない重大な事由」を問題にしたほうが解決は早いと思われます。

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「不貞行為」について

・不貞行為とは、ある程度継続的で肉体関係を伴う男女関係をいいます。
・夫の不貞行為も、妻の不貞行為もどちらも離婚原因になります。
・不貞行為の相手は特定の者か不特定多数であるかを問いません。
・不貞行為は自由意志に基づいてする行為なので、レイプを受けたことは不貞行為になりません。

ここでいう「不貞」とは、「婚姻を破綻させた」かどうかということがポイントとなります。
たとえば、一度きりの浮気であっても、言葉上の厳密な意味では不貞ということもできますが、家庭や配偶者を大切にする気持ちも十分にあって、浮気行為を反 省しているという場合には、「婚姻を破綻させた」とまではいえないと判断されます。
ですから、離婚においての「不貞」とは、ある程度継続的である場合をさすものといえます。
これに対し、夫が一度だけ浮気したということを妻がどうしても許せなかったために、夫婦関係がぎくしゃくして離婚を考えるに至った場合には、「不貞行為」 というよりは「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるかどうかが問題になります。
また、性交渉がない場合の不貞についても解釈はまちまちですが、「不貞」よりも「婚姻を継続しがたい重大な事由」のほうに重点がおかれると思います。
ちなみに、同性愛の場合も不貞、あるいは婚姻を継続しがたい重大な事由に該当します。

■ 一度だけの不倫でも離婚原因になるか?

夫婦にはお互いが貞操を守る義務が課されています。
この義務に違反すれば離婚の請求ができますし、不倫相手には「貞操義務侵害者」として、損害賠償(慰謝料)の請求ができます。

しかし、たった一回の不貞行為で離婚請求ができるのかどうかについては、そこまで具体的に明文にはされていません。

ただし、民法では、法定離婚事由があった場合でも、「裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」 と規定していますので、たった一度の単なる浮気程度である場合には、離婚が認められない可能性
も大きいといえそうです。

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「婚姻を継続しがたい重大な理由」について

・婚姻を継続しがたい重大な理由とは、夫婦の関係が修復不可能な程度にまで破綻し、婚姻を継続させることができないと考えられる場合をいいます。
・性格の不一致、親族との不仲、暴力や虐待、常軌を逸した異常な性関係などがこれにあたります。

■ 「性格の不一致」による離婚

離婚理由として認められる「性格の不一致」というのは、「性格が違うことによって生じる、婚姻を継続しがたい重大な事由」があるかどうかが問題となります。
離婚事由としては「婚姻を継続しがたい重大な事由」の一つということになります。

「性格や育った家庭環境が違うことを十分に理解した上で、夫婦関係を続けていくよう努力をしたが、あまりにも性格が違うため、一緒に暮らすのはとうて

いム リだ」という場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるということになります。

性格の不一致の直接的な訴えとしては、「利己的かつ自己中心的」「思いやりがない」「嫉妬深い」「会社人間で家庭をかえりみない」のようなものがあります。
しかし、「不貞」や「悪意の遺棄」のような理由がない場合は、かならずしも相手が一方的に悪いといえるものではなく、夫婦双方に責任がある(あるいはない)といえるでしょう。

いずれにしても、どう見ても婚姻は破綻した状態であり、将来的にも修復の可能性がなければ、離婚を認められます。

■ 「性の不一致」を原因とする離婚

離婚の訴訟では、性の不一致による破綻を取り上げた例が数多くあります。
それだけ、性というのは夫婦にとって重要な問題なのです。

「婚姻を継続しがたい重大な事由」となる性の不一致としては、性的不能、異常に強い性欲、性に嫌悪感を抱いている潔癖症、性的嗜好が異常(いわゆる変態)、同性愛などがあり、いずれも離婚を認められることが多いようです。
また、子どもができないということは離婚事由にはなりません。
不妊症の原因は、妻だけでなく夫の側にもありえるからです。

子どもが生まれないことについて夫の親族が干渉したことがきっかけで、夫婦仲がぎくしゃくしてきたという場合は、不妊症そのものは妻に責任があるわけではないです から、この場合は、妻の側から夫に対して「婚姻を継続しがたい重大な事由」を理由として離婚を請求することとなります。

また妻に子どもができないために夫が他の女性に子どもを生ませた場合、当然ながら夫の不貞を理由とする離婚事由となります。

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